死してなほ 兜のおもき 兜虫 土生重次のぼりゆく 草細りゆく 天道虫 中村草田男少年の 少女へわたす てんと虫 きくちつねこ

「蛙の目借り時」「目借り時」 蛙が目を借りていってしまったから眠い、という意味で、眠い事、眠そうにしている様子を意味する。茶の湯気は 丸い蛙の 目借り時目借時 裾廻（すそみ）に田居の 家二千

たんぽぽの 綿や眼下に 太平洋たんぽぽの 綿よ宇宙の 爆発よたんぽぽの 隣に座る 昼休み

不幸では ないと思ふ日 蜆汁 安食哲朗

短日や 校舎の窓の 琥珀色 藤田由美子日の匂ひ 残る帽子や 暮早やし 古屋徳男

箒目の 影見る庭や 小六月 足立歩久欠伸して 小さき牙や 猫小春 木原泰紀

孤独でも 孤高でもなく 鵙日和 藤崎由希子

桃食うて 煙草を喫うて 一人旅 星野立子桃売りの お国訛りを 買ひにけり 長谷川瞳

老人の 小言に賛意 秋の風 金山敦観猫と居て 各々に聴く 秋の風 中居真紀子

鰯引き 浜に光を 積み上げる 岩神刻舟鰯引く 太平洋の 色のまま 永田清風

秋蝶の 先に来ている 畑かな 坂口ちか子秋蝶や 掴みどころの なき日和 上田陽子秋蝶の 時には白を 待つ心 星野高士

秋たつや 川瀬にまじる 風の音揉めごとも あるにはありて 秋簾雨がふる 雨がふります 秋簾

涼しさや 電車のドアの 今開き