熊坂先生の話−「創発する社会」より−

最近、SFCの教員で各章を担当執筆されている「創発する社会」を読んだ。今、最初の熊坂さんの章を読んだのだが、創発をこれまでの社会論の流れからとらえているのが、さすが熊坂さん。


冒頭
□(創発とは)多くの要因や多様な主体が絡まりあいながら、相互に影響しあっているうちに、ある時にエネルギーの向き方が一定方向にそろって、当初は思いもよらなった結果がポンと現出することがある。p1


熊坂さん

創発が方法論として有効なのは、「発見のコンテキスト」においてである。発見のコンテキストにおいては、ある知識がどのように発見されたか、それをもって確からしさを論じられる。p12

SNSでのコミュニティネットワークやコモンズは、身近な日常性の世界からちょっとだけジャンプし、そこで共感し共有される小さな価値を媒介とした柔らかな絆でつながる身体感覚にあふれた世界だ。また、コミュニティは他の多くのコミュニティとの間に弱い紐帯を媒介としてネットワーク化されることが存在の条件である。

□新しい身体知をもつ自律的な個人たちが、新しい社会コンテキストであるコモンズ型のコミュニティネットワークとそこでの多様で弱い紐帯を持つ時、それは21世紀的な社会創発をもたらし、予期せぬアウトカムを算出するはずである。


「正当化のコンテキスト」の流れで、「発見のコンテキスト」と言い切ってしまうこと、「身体知の次元においてネットワークを介して共感・共有される小さな価値」という話、とても面白く読んだ。