創発空間における「コンテキスト」の重要性−國領さんより−

続いて、「創発する社会」の國領さんの章。國領さんのすごいところは、あれだけ中小思考を進めながらも、あくまで具体的なビジネスモデル提案のレベルまで持っていっているところだと思う。

創発空間とは、創発を誘発するような仕組みをもつ空間である。そこで大切なのは、「インフラ」と「コンテキスト」であると國領さんはいう。

汎用性の高いインフラ:情報の意味とは無関係に記号としての情報を運ぶ、物理的な媒体。ここが、自由なつながりの基盤となる。

コンテキスト:運ばれた情報が主体間で理解されるにあたって依拠するルール(語彙、文脈、文法、規範)と、それを体現したソフトウェアの仕掛け。ここは、あえて制約条件として位置づける。「どのような制約を入れると、どのような相互作用が起こり、それがどのような創発に結び付くか」という点が研究の焦点になる。


コンテキストにおける重要なこと
□まったくルールや文脈を共有していない人間同士では、いくらシグナルを交換してもお互いに意味を理解できないが、コンテキスト(制約条件)という共通の意味解釈フレームワークを与えることによって、それが理解可能になるのである。

□ほとんどの創発は同一コンテキスト内で行われる。同一コンテキスト内における相互作用は、濃密で生産性の高いものになる可能性もあるが、一方で同質的になってしまい、閉鎖的で普遍性のないアウトプットしかでなくなったり、創造性の低いものになったりする危険性を持っている。そんなとき、弱い紐帯を持つ「ゲートキーパー」の存在が、異なるコンテキストを理解可能にする「翻訳者」となっている。

創発を誘発するコンテキスト設計の方法論については、残念ながらまだ統合フレームワークを持っているわけではない。それは、「いかなるコンテキスト設計が、いかなる相互作用のパターンを生み出し、それが生れ出る創発の携帯にいかなる影響を与えるのか?」「いかなるコンテキスト設計を行うとよりよい創発生まれるのか」といった問いの答えとなるだろう。


今後、2年間の研究で、このことをきちんと踏まえて研究していきたい。