短い感想「よのなか」藤原和博・宮台真司編

この本は「人生の教科書」とうたって、ハンバーガー、家、仕事、自殺という切り口から社会をとらえた、新しい「社会の教科書」である。個人的には、こういうことを、規定の教科書と結びつけて授業で話してくれたら学校の授業も楽しいだろうにと思う。


ここでは、第5章の宮台さんの「意味なき日常をどう生きるか」という章について取り上げたい。この問題の背景には、物が豊かでない時代には「未来のための現在」という物語的な生き方が重要だったが、すでに豊かになった現代では、そのような「意味」を見つけることがとても難しくなっていると宮台さんはいう。そんな時代には「とりあえずの目標」を立てて、その目標にみんなで一緒に一生懸命がんばること自体を「楽しむ」という生き方が重要になってくるというわけである。このことを「クスリ」や「売春」というテーマで過激に語るところが、なんとも宮台さんらしい。宮台さんは、最後にこのようにまとめている。

「成熟社会とは、何に意味があり、何に意味がないのかが、人それぞれに異なる社会のことです。そういう社会では、『これさえあればおまえは幸せだ』と押し付けずに、『共に生きる』という枠の中で『自分だけの幸せ』をお互いに模索することが、責任ある生き方だと考えられます。・・・。共に生きることを侵害しない性、共に生きることを侵害しないクスリ、共に生きることを侵害しない暴力は、たとえ奇妙に見えたとしても、許されるべきなのではないでしょうか。」(p241)


ここまでの発言には異論もあるかと思うが、それでも、「今、ここを『共に楽しむ』生き方」というのはとても大事だと思う。その生き方を学ぶのが、サークルであり、ゼミであり、大学生活なのかもしれないとも思う。